Virtual Inami
Virtual Inami
2022

工芸のためのメタバース
富山県南西部にある、日本有数の木彫りの町・井波。その町もモデルにしたメタバース空間を制作した。現実のまちと同じように、市民だけでなく世界中の人々が訪れることができ、ショップ、ギャラリー、オフィスなど様々な機能が集約している。空間の中では井波の町の空気感を体感できるほか、彫刻作品を立体で鑑賞することができる。「井波」と「木彫」の2つのキーワードに特化したまちで、これらの話題に関心のある人々が集い、交流しながら、新たな創造が生まれる場所を目指した。
Issue
人口8,000人のこの町には200人近い彫刻師が暮らす。最盛期の1990年頃には町全体での彫刻関連の売上が20億円あったというが、2023年現在では5億円程度にまで市場が縮小したとされている。祭りの時には肩と肩がぶつかるほど賑わっていたという目抜き通りも今では閑散とし、町唯一の高校の閉校に続き、中学校の存続も危ぶまれている。一方で、近年は若者を中心とした移住者が増加し、空き家が減少するなど、地域再生のモデルとして視察も相次いでいるという。しかしながら、職業の選択肢の少なさやアクセスの不便さなどが原因で、総合的な人口減少には歯止めがかからない。そうした状況の中、世界中のどこにいても井波と関われるしくみをつくるべく、バーチャル井波という場を制作することにした。




Process
実在しないものを作ることができるのはCGの魅力である。町を忠実に再現するのではなく、必要なものだけを組み込むことで、訪問者に対して効果的に井波らしさを訴求することができると考えた。町の本通りをモデルにしつつ、独自に解釈した理想の町並みを制作。かつてあったという水路を復元することで、歴史を感じられるようにもした。


Output
VRChatとclusterでの公開から3日間で日本国内やアメリカなどから老若男女を問わずに約1,500人が訪れた。井波の彫刻師と、インターネット上のユーザーとの交流も生まれ、専用のDiscordコミュニティではユーザーから彫刻師に対して彫刻の活用方法の提案も生まれた。
Media
- 2022.9.2 北日本新聞朝刊
- 2022.9.5 日本経済新聞朝刊
- 2022.9.23 宣伝会議「ブレーン 22年12月号」